今日は、久々の株本のレビューです。

先日読んだ、朝倉慶氏の新刊「株はもう下がらない」を読んだ感想です。

朝倉慶氏と言えば、最近、Youtube動画でもたくさん配信されていて、「とにかく株を買え」と力説する姿は我々個人投資家としても心強い限りなのですが…

うえけん

読み進めるごとに色んな疑問が湧いてきたんですよね

ということで、実際に感じた疑問や分からないことを中心に書き綴っていきたいと思います。

一番言いたいことはこれです。

うえけん

【自己紹介】
・2012年から高配当株投資を開始
・基本買ったら売らない長期投資家
・配当金は再投資、複利が基本
・2025年のパフォーマンスは年初来+30%を記録!
・2025年秋に総金融資産1億円を突破しました。

なお、ご意見・ご感想はX(元Twitter)までお願いいたします。

「株はもう下がらない」の概要

朝倉慶氏の「株はもう下がらない」を読んでいない人のために、簡単に概要をまとめておきます。

「金余り」が相場の本質
 世界中の中央銀行が大量の通貨を供給し続けており、行き場を失った巨大なマネーが資産市場(株式など)に流れ込み続ける「インフレ・パラダイム」に入ったと主張しています。

「預金」から「株」への大転換
 インフレ局面では現金の価値が目減りするため、資産を守るためには「預金」ではなく、インフレに強い「株式」などのリスク資産へシフトせざるを得ない状況を指摘しています。

従来の常識(弱気論)の否定
「借金が多いから危ない」「景気が悪いから株が下がる」といった従来の経済論理は、現在の過剰流動性相場では通用しないという、逆説的な視点を提示しています。

…と、結論だけ読むと至極同意なのですが、この結論に行き付く過程においては、日本の(章によっては世界の)中央銀行における政策を痛烈に批判しているのです。

インフレ政策への批判
これまで日銀が実施してきた金融緩和によって今日本はインフレの真っ只中にいる。インフレによって貨幣の価値は低下し、国民の生活は困窮している。

インフレによる功罪
インフレによって国の借金は目減りし、PB(プライマリーバランス)は改善、GDPは上昇するなどのメリットは全て見せかけであり、政治家の人気取りである。

金融緩和による円安の影響
金融緩和によって円安を引き起こし、日本はかつてないほど貧しい国になった。通貨は国家の信頼であり、日本に対する世界の評価が下がっていることを意味する。

日本はハイパーインフレとなる
金融緩和と国の借金増加により、トルコやアルゼンチンのように日本はハイパーインフレを迎えることになる。

大規模金融緩和の反動
リーマンショックやコロナショックなど大規模金融緩和によって経済が立ち直ったものの、各国のGDPは中央銀行のバランスシートほど上昇していない。一方で株価は急騰している。このことから金融緩和が株価を維持するための方策だととらえるべき。

このことについてみなさんはどう思いますでしょうか?

本書における率直な疑問点

「現金だけ保有している者は貧しくなる」「これからは株を持つべき」という意見はとても賛同するのですが、どちらかというと悲壮感が漂っているというか、

世界の中央銀行が誤った施策を続けるから、我々の取るべき道はひとつしかないんだよ

というやや強迫観念に駆られた意見のように読めます。「とにかく買え!買え!」みたいなね。

私は経済の専門家でもなんでもないし、批判するに値する知識はありませんので、

率直な疑問点

・これから調べたい、勉強したい課題

ということでメモしていきたいと思います。

そもそも今の日本はインフレなのか?

まず、最初の疑問は、今の日本はインフレなのか?という疑問です。

何言ってんだ、世の中の値段は全て上がっているじゃないか

そんな声を聞こえてきそうです。本書の中でもこんな表現があります。

「今明らかにインフレではないですか? 毎年物価が上がっています。すでに4年近く物価上昇率は2%を上回っています。2025年は年間を通じてほとんど3%近い物価上昇率です。」

朝倉慶氏「株はもう下がらない」より引用

いわゆる消費者物価指数(CPI)は確かに3%、4%を記録しているのは事実です。

でも、中央銀行が金融政策を判断する指数はエネルギーと食料品を除いた指数(いわゆるコアコアCPI)を見るのだそうです。

これは地政学リスクの影響を受けやすいエネルギーや気候等に左右されやすい食料品を除くことで、真の物価変動を把握するための世界標準の指標です。

ちなみに日本のコアコアCPIの場合、考慮するのは生鮮食品のみで食料品が加味されていません。世界標準のコアコアで見ると、国内の食料品以外の物価上昇は限定的と言ってよさそうです。

総務省資料2020年基準消費者物価指数(2025年11月)

いやいや、レストランの価格やお米の価格は上昇しているだろ…

という指摘も確かですが、それは経済学的には「価格」のことであり、「物価」とは棲み分けて考えるそうです。

項目価格(Price)物価(Price Level)
対象個別の商品やサービス世の中の総合的な水準
視点ミクロ的
(1つの「点」を見る)
マクロ的
(全体の「面」を見る)
リンゴ1個150円
ガソリン1L 170円
消費者物価指数(CPI)
決まり方その商品の需要と供給通貨量や国全体の経済状況

また、ニッセイ基礎研究所によりますと、コアCPI上昇率は26年2月に2%割れへという記事も散見されます。

本書の中でも…

・今に日本は手に追えないようなインフレに陥る

・物価が上がる中、財政出動する高市内閣の失政

として批判していますが、金利引き上げを要するほどインフレに至っていないのが実態と言えそうです。

円安は悪いことなのか?

とにかく円安は悪!という意見もステレオタイプのように見えます。悪い面もあれば、良い点もあるからです。

円安のメリットとして想定されるものを列挙してみます。

円安のメリット

GDP(国内総生産)の押し上げ効果
円安になると、海外市場で輸出数量が増えやすくなり、日本製品の価格競争力が上がります。また、輸出による円建て売上が膨らむため、数値上のGDPを直接押し上げます

インバウンド消費(サービス輸出)
外国人観光客による国内での消費が増加することで、観光客数と1人あたりの消費額の両方が増加し、地域経済を活性化につながります。

法人税収の増大
自動車や電機などの巨大な輸出企業が、為替差益によって過去最高益を更新すると、国に納められる法人税が激増します。

外貨準備の評価益
日本政府が保有する膨大な外貨準備(ドルなど)の円換算価値が上昇し、含み益が発生します。

例えば、これだけ財政悪化が懸念されていますが、税収自体は令和元年以降、最高額を更新中です。

いわゆる円安には近隣窮乏化(自国の経済を立て直すために、他国を犠牲にする経済政策)の効果があります。

また、もしも円安によって日本の国際的な地位が暴落するのであれば…

・国債価格の暴落

・CDS(クレジットデフォルトスワップ)の上昇

そのような現象が起きるはずですが、今のところそのような気配はありません(ま、気配があってから気付いても遅いのですが)

結局、為替レートは通貨の相対的な需給関係(通貨の発行量や二国間の金融政策の差)によって決まることが大きく、これを国家そのものの評価や信頼度に結び付けるのは少々強引かなという気もします。

このように円安には当然メリットとデメリットがあります。デメリットばかりを強調して不安を掻き立てるのは合点がいかないものがあります。

トルコやアルゼンチンのように経済破綻への道を辿るのか?

本書の中では、トルコやアルゼンチン、ブラジルや韓国を引き合いに出し、ハイパーインフレ、通貨危機や経済破綻した国のように、日本も同じ道を辿るであろうと警告します。

3国が経済破綻した理由

外貨建て債務の多さ
ドルなどの外貨で借金をした結果、通貨安によって借金の額が自国通貨建てで膨れ上がり、返済不能(デフォルト)への懸念でさらに通貨が売られるという「負の連鎖」が生じた。

供給能力の欠
国内で必要なモノ(工業製品など)を自給できず、輸入に依存度が高いため。通貨安によって輸入品が不足し、国内製品の供給が追い付かなくなり、価格が爆発的に跳ね上がった。

中央銀行の独立性の欠如(特にトルコ)
政治的な圧力により、インフレが起きているのに金利を下げ続けるなど、不適切な金融政策が強行され、通貨への信用が失われた。

日本の場合、国債は全て円建てですし、世界一の対外純資産保有国。トルコ、アルゼンチンやブラジルと実態は全く異なります。

本書では、いつごろ日本が経済破綻するかを明確には記載していません。

2,3年後に起きる話なのか?

40,50年後に起きる話なのか?

それは知る由もありません。

ちなみに、スウェーデンや米英、ニュージーランド、カナダなどインフレ目標を設定してハイパーインフレに陥った国は過去ひとつもないと言われます。

また、ハイパーインフレの定義は、経済学者のフィリップ・ケイガンが提唱した「物価上昇率 月率50%超」が一般的な定義で、これは年率13000%の上昇率となります。

日本は本当にハイパーインフレ→通貨安→経済破綻の道を辿るのでしょうか?とても疑問でなりません。

私たち個人投資家としてふるまうべきこと

本書の疑問点は他にもたくさんあるのですが、キリがないのでここらでやめておきます。

私が読む限り、

・価格と物価の違い

・よいインフレと悪いインフレ

この違いが混同され、または一方だけを誇張しているように読めますし、世界標準である金融緩和を取る米英も含めた中央銀行の手法を批判するだけなら何も生まない非建設的な戯言のようです。

さらにガソリン暫定税率の廃止もは愚策で国民に迎合したポピュリズムと評するなど私たち庶民の感覚とは少々ずれているように聞こえます(「暫定」なのに廃止されないほうがおかしいのでは?)

問題は、朝倉氏の見方が正しいかどうかではなく、私たち個人投資家として、このような情報にどう向き合うかです。

人はネガティブな情報に敏感な特性を持っている

人の脳の特性としてネガティブな情報に敏感になりがちである点があります。悲観的で衝撃的な見出しのほうがPVを稼げるからです。

朝倉氏の作品を見ても、刺激的で大胆なタイトルが目立ちます。

主なタイトル一覧

  • 2012年、日本経済は大崩壊する
  • もうこれは世界大恐慌
  • 株は再び急騰、国債は暴落へ
  • 暴走する日銀相場

例えば、ひふみ投信の藤野さんだって、2025年4月のトランプ関税ショックのときに、「これまでの暴落とは違う」「今まで見たことがないような暴落が起きる」なんて言ってましたからね。

それがどうでしょうか、今となっては日経平均は5万円突破、SP500は史上最高値を更新中です。

うえけん

別に藤野さんを否定しているわけではないです(聞かれたら「可能性」として答えざるをえないでしょうからね)

私たちが気を付けるべきは…

こうした予測に不安や恐怖心を煽られ、ポジションを縮小したり

株価の未来が明るいときには買い煽りに影響を受けてリスクを取りすぎてしまう点です。

だって、誰にも未来なんて予測できないわけですからね。

こうした情報から身を守りたいというのなら、一番簡単なのは、PV稼ぎのYouTube動画やマネーサイト、SNSから距離を置くことです。

あと「リーマンショックの暴落を的中した」とかいうクレジットには胡散臭いから近寄るべきではないでしょう。

「根拠のない相場観」や「これから上がる株」といった情報とのかかわり方こそ、私たち個人投資が最も注意しなければいけないことなのかもしれませんね。

最後に

ということで今日は、朝倉慶氏の新刊「株はもう下がらない」をレビューしました。

経済分析はいろいろな意見があってどれが正しいのか分からなくなることがあります。それでも幅広い知見に触れ、自分なりの意見を持つことが大事だと思っています。

ただし、朝倉氏の言う通り、インフレへの備えは必須条件です。国は何も助けてくれませんから自助努力で未来を改善していくしか道はないのです。

私は高配当株投資でその道を切り開くための努力をしてきましたし、これからもできる限り継続していくつもりです。

わが高配当株投資について知りたいと思う方はこちらのほうからご覧ください。

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それではよい1日を!