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【本格運用10周年】改めて思う高配当株投資のメリットと過去の振り返り

振り返ると、高配当株投資を本格運用し始めて10年が経とうとしています。この間、いろんなことがありました。

コロナショックや植田ショック、トランプ関税ショックなどなど、これ以外にも名もない調整相場も経験してきました。

それでも株式投資を続け来られたのも全て高配当株投資のおかげ。

本格運用から10年目、気が付けば配当金も年間240万円を超えました。

下図は10年間の資産推移です。

わが高配当PF資産推移(単位:千円)

過去6年間の運用成績です。

わが高配当PFTOPIX
2019年+21.55%+15.21%
2020年-0.71%+4.84%
2021年+21.9%+10.40%
2022年+14.15%-5.05%
2023年+16.77%+25.09%
2024年+30.01%+17.69%
トータル※+154.94%+86.39%
トータルは2019年1月を100とした場合のリターン

今日は、高配当株投資を振り返りつつ、兼業サラリーマン投資家の立場から10年間高配当株投資を経験して分かったメリットを改めて整理していきたいと思います。

個人的な記録・メモが中心となりますが、このブログをご愛顧いただいている皆さまにとっても、投資手法のヒントになるような記事を心がけていきたいと思います。

うえけん

【自己紹介】
・2012年から高配当株投資を開始
・基本買ったら売らない長期投資家
・配当金は再投資、複利が基本
・2025年のわが高配当PFは年初来+4.86%

なお、ご意見・ご感想はX(元Twitter)までお願いいたします。

本格運用に切り替えた2016年の出来事

私はこれまで中小型株成長株を中心に投資を続けてきました。その路線を高配当株中心に切り替えたのは2016年。

この年に何があったか?

それはブリグジットのあった年でした。

ブレグジットとは、英国(Britain)と離脱(exit)を組み合わせた造語で、英国が欧州連合(EU)を離脱することを指します。2016年6月23日に行われた国民投票で離脱派が勝利したことを受けて2020年にEUから離脱しました。

 

こうした地政学リスクが起こったときに一番最初にオープンするのが日本のマーケット

日経平均株価は世界の経済不安から大幅に売られ、1日で前日比1,286円安(-8%安)の1万4,952円まで暴落したのです。

うえけん

今の日経平均で言えば1日で3500円ぐらい下げた計算になるね。

今となっては暴落相場に耐性が付いている私ですが、当時の未熟な私は不安と恐怖でいっぱい。

その日は、大井町にある丸八というとんかつやで職場の同僚とランチをしていたのですが、店内のテレビで流れる日経平均暴落のニュースで、友人との会話も心あらず。あの悪夢は今も鮮明に心に焼き付いています。

成長株や売買差益狙いの場合、買値から一定割合を超えると損切りするのが常套手段。ブリグジットで持ち株たちは次々ロスカットされていきました。

しかし、翌日以降の株価は急反転。私は上がりゆく株価ボードの前に呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

あなたが売ったソコが底…初心者にありがちな罠にまんまとハマったわけです。

ブリグジットで感じた高配当株の底力

一方で底堅いのが高配当株銘柄。乱高下する成長株とは異なり、株価は比較的安定をしていました。

当時のポートフォリオは以下のとおりです。

CODE銘柄保有状況
2169CDS保有中
3143オーウイル保有中
4502武田製薬保有中
4708もしもしホットライン減配で売却
5187クリエートメデッィク保有中
6379新興プランテック減配で売却
7466SPK保有中
7751キヤノン減配で売却
8306三菱UFJ保有中
8793NECキャピタル保有中
9055アルプス物流TOBで売却
9437NTTドコモTOBで売却
9769学究社保有中
2016年6月末時点のPF。保有状況は2025年6月時点

 

もうこれ以上、株価に振りまわれない、腰を添えて株式投資に専念していきたい。そう感じて2016年から少しづつ高配当株銘柄にシフトして今に至ります。

改めて感じる高配当株投資のメリット

2016年には600万円程度だったポートフォリオも、その後の追加投資や成長株からの資金シフトによって、今や5600万円まで資産を増やすことができました。

そのメリットをここにまとめてみます。

ファンダメンタルを気にする必要がなくなった

わたしたちは、どうしたらいいかわからないとき、自分の行動を決めるためにまわりの人々を見る。いつも周囲を観察し、「他のみんなは何してるかな?」と思っている。アマゾンやイェルプ〔地元のレストランや店舗の口コミサイト〕やトリップアドバイザーのレビューをチェックする。買い物でも、食事でも、旅行でも、「ベスト」なものをまねしたいからだ

ジェームズ・クリアー著「ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣」(下線部は筆者)

もうファンダ分析なんてしない

高配当株投資を始めて一番大きいのは、ファンダメンタル分析に固執する必要がなくなった、ということです。ぶっちゃけ、高配当株投資にファンダメンタル分析は必須ではないです。

いやいや、高配当株投資とはいえ事業内容とか収益の伸び率とか銘柄選びに必要でしょ?

「いや、あの有名Youtuberもプロのファンドマネジャーだって必要だって言っているじゃないか

でも、ホントに必要なのか?効果があったのか?考えたことありますか?

ちまたにあふれるファンダ分析(一例)

  • 将来性のあるビジネスをしているか
  • 成長性が高い事業内容か
  • 売上高は伸びているか
  • EPSは上昇傾向か
  • 営業利益率は高いか
  • 自己資本比率は〇%以上か
  • 流動比率は高いか

みんなファンダ分析が必須って信じてやまないのは、みんなやってるから、みんなそれが大事っていってるから、という理由だけなのではないでしょうか。

そもそもビジネスの先行きは読めない

ユニクロの経営者である柳井正氏は、その著書の中でこう述べています。

” 商売は失敗がつきものであり、十回新しいことを始めれば九回は失敗する、中には「百回に一回程度しか成功しない」などと言う経営者もいる ”

柳井正著 一勝九敗より引用

世界的な有能な経営者をもってしても新規事業や事業拡大の先行きは不透明なのです。なのに素人の個人投資家がどうやって業績を正確に予測することができるのでしょうか?

しかもビジネスは時間とともに変化しますから、ファンダ分析はさらにやっかいな作業となります。

私もファンダ分析をやっていた時期はありましたよ。

・この会社は有望!

・この会社は将来伸びる!

そう確信した銘柄でも、減益決算を食らうことは普通にありました。

また、暴落相場では「自分の分析が間違っているのではないか」と不安を感じて、恐怖のあまり投げ売りしてしまうのです。

このように、株式投資に疲弊し、成果もほとんど得られず、相場から立ち去ってしまうのです。

株式指標のほとんどが無駄

ファンダ分析には知識とセンスが必要、でも、スクリーニングによる銘柄の選別は操作方法さえわかれば誰でもできるのが定量分析です。

スクリーニング条件の例としてはこんな感じです。

・売上高、収益は前年比+10%以上

・自己資本比率50%以上

・時価総額〇〇〇億円以上

・PBR1.5倍以下

・流動比率200%以上

でもですね、スクリーニング分析だけで魅力的なお宝株がヒットした苦労はしません。単にスクリーニングだけで優良銘柄が発掘されたらみんなお金持ちになれるはずです。

また、有用とされるスクリーニング条件も高配当株投資には意味がないものが多いです。

例えば、営業利益率10%超(Aグループ)と営業利益率10%以下(Bグループ)で、5年後に減配がなかった銘柄数に違いがあるか、会社四季報スクリーニングで調べてみたことがありました。

その結果、安定配当+高配当株選びにあたっては、営業利益率はほとんど関係ないです。

【検証】高配当株選びで営業利益率は有効なのか?過去5年間のデータで検証してみた

5期前から非減配銘柄だった銘柄の7割以上は営業利益率10%以下で、営業利益率10%超の銘柄は22%でした。

あなたは営業利益10%超の銘柄から選んだ瞬間、残りの安定配当銘柄を選択肢から除外してしまっているのです。

また、営業利益率10%超の銘柄(Aグループ)は業績が悪化すると減配しやすく、営業利益率10%以下のBグループは減配しにくいというデータもあります。

ほかにもスクリーニングによくある指標として自己資本比率がありますが、安定配当銘柄と自己資本比率も関係はないです。

自己資本比率は考える必要なし?高配当株投資と自己資本比率を考える

多くのインフルエンサーたちが、

・営業利益率10%以上は優秀な会社!

・自己資本比率50%以上なら財務健全で倒産リスクは少ない!

・流動比率200%以上なら現預金豊富で増資リスクが少ない!

それはそれで間違いではないのですが、理屈と実践は全然別問題。重要なことは、良い会社が良い投資先であるとは限らないってことです。

何気なく当たり前と信じていることも、実際に調べてみると意味がない、あるいは自ら投資チャンスを逸していることがあるんです。

自分の頭で考えるって大事ですよね。

高配当株投資で重要な観点

ファンダ分析は無理、株価指標も役に立たない、では、何を見て投資すればいいか?

私が考えたのは次の3つの要素です。

・事業の安定性

・株主重視

・安定配当

問題はこれらをどう図るかです。

単に累進配当政策を公言しているから、とか、中期経営計画に書いてあるから…などあいまいな基準ではなく、定量的に(具体的な数値や基準で)明確にすることが必要です。

なぜなら、暴落相場でも堅調な上昇相場でも、感情に流されずに冷静にいつでも同じ判断や行動ができなければ意味がないからです。

そこで二つの明確な基準を考えました。

リーマンショックが起きた2009年以降減配がないこと

過去10年間営業赤字がないこと

前者は最近出版されたバフェット太郎氏の「投資教室」の中でも述べられていたことです。

実際に、このたった2つのシンプルな条件を満たす銘柄を買うだけで高配当株投資がうまくいくことが分かったのです。

ジェレミーシーゲルの成長の罠

成長の罠とはジェレミーシーゲルの書籍の中で出てくる言葉で、高成長企業に投資しても、高いリターンが得られるとは限らないという投資家に陥りがちな過ちを指摘したものです。

ただし、2020年以降の5年間のデータでは、バリュー株に比べてグロース株のほうが年率で5%程度優れたリターンを上げているとされます。

シーゲル博士のデータや少々古いようにも見えますが、私の経験上、直近の業績が右肩上がりの銘柄よりも、成長が見込めない、または一時的に業績不振に陥った銘柄に投資する方が意外とうまくいくことが多いです。

例えば、弘電社(1948)という銘柄があります。

この銘柄はその時の過去の業績は以下のとおりでした。

会社四季報2020年夏号より引用

ご覧のとおり、2019年3月期をピークに業績は下降気味。2020年3月期は減収減益。2021年3月期も減収減益予想となっています。

売上高・営業利益が右肩上がりとは言えず、普通なら投資対象から外したくなります。

私は2020年8月に配当利回り4.4%超を待って4800円(分割後961円)に購入、その後の株価の推移はこのようになっています。

弘電社(1948)の株価推移(月足)

現在株価は2.5倍となっており、今も絶賛保有中です。

このように直近の業績がイマイチな安定高配当株を長期保有するだけでも大きなリターンを得られるのです。

このパターンで投資した銘柄はたくさんあります。

減益傾向で購入した高配当株

  • 2449 ブラップジャパン
  • 2918 わらべや日洋
  • 4041 日本曹達
  • 4220 リケンテクノス
  • 7820 二ホンフラッシュ
  • 8306 三菱UFJ

などなど

ファンダ無視で購入した銘柄が平気で3倍株、4倍株に育つのを見ると…

・株式投資でいかに今まで無駄な作業をしてきたのか

・株式投資はもっとシンプルに考えてよかったんだ

私たちは、知らないうちに複雑に時間をかけて考えることが正義であり、知的で正解を見つける唯一の方法と信じ込みがちです

とは言え、こんなにシンプルに考えて本当に大丈夫なのか?そう思う人もいるかもしれません。

イーロン・マスクの史上最高の車をつくったときの口グセは「この車の最高の部分は、削ってなくなった部分だ」という逸話もあります。

複雑な条件は捨ててシンプルにすること自体が重要なのです。そして、高配当株投資だからこそシンプル投資が実現でき、私も相場に長く居続けることができたのだと確信しています。

株価を気にしなくてもよくなった

ミスターマーケットはあなたに無視されても全く気にしません。もし、あなたが今日の価格に関心がなくても、彼はまた明日もやってきて新しい値付けをします。

(中略)

もしある日彼が特別バカげたことを言ってきたら、無視しても利用しても構いませんが、影響されると悲惨な目に遭うことになります

ローレンス・A・カニンガム著 バフェットからの手紙 第5版(下線部は筆者)

目標を受取配当金にシフトする

株式投資のストレスのほとんどは株価の変動によるものです。

自分が売った瞬間に株価が暴騰した、自分が買うと株価下がる…誰かが自分を監視してるんじゃないか?

予想通り好決算なのに織り込み済みで株価が爆下げしてしまった…この決算で下げるのか??

そんな気持ちになる人もいるはず(←昔の私がそうでした)。

サラリーマンの方の中には株価が気になって、勤務時間中にトイレに閉じこもって株価をチェックしたり、売買注文を繰り返す人もいるかもしれません。

なぜ、みんな株価が気になるのでしょうか?

そもそも株価が下がって困るのは高値で売りたいからです。もしも株を買ってひたすら長期保有するなら、株価の下落はピンチではなくチャンスなのです。

高配当株投資なら、投資目標を含み益を含めた時価の総資産ではなく、年間の受取配当金額を投資目標とすることで株価下落は怖くなくなります。

結果、日ごろの株価に一喜一憂することがなくなり、腰を据えて投資に専念することができます。

配当株の顧客効果

成長性や好業績を期待された株と高配当株の値動きで大きな違いは業績悪化に伴う株価下落です。

高配当株は、決算発表で通期見通しを多少下回る決算を発表しても、減配さえなければ株価の値動きがマイルドな点に特徴があります。

これは高配当銘柄には配当金目的で購入する人が多く、減配さえしなければ保有し続ける株主が集まっていることを示しています。

これを高配当株の顧客効果と呼ぶことがあります。

つまり、あなたは減配可能性の低い高配当株でPFを組むことができれば、運用資産はボラティリティが低く、めっちゃ安定することになるのです。

株価は見なくても生存できる

株価を気にし過ぎることは時間の浪費です。例えば、直近のトランプ関税ショックがあった2025年4月の株価を見てみましょう。

35916円だった日経平均は一時31000円まで下落。その後、35946円まで株価は戻して変動率はほぼ0%。そう、結果的に暴落とか何もなかった月だったのです。

Yahoo!ファイナンスより引用

トランプ関税問題による株価急落で、ネットメディアやプロのファンドマネジャーは恐怖心をあおるような発言をしてました。

・リーマン級の暴落がこれから起きる

・この暴落は先行きが見えない。これまで経験してきた暴落とは全く違う

しかし、株価はわずか半月程度で元に戻ったのです。

このように乱高下する株価に振り回されて貴重な人生の時間を消耗するよりも、私たちは充実した時間を過ごすべきです。

夫婦でウォーキングしたり、子どもとスマブラやったり、ネトフリで極悪女王でも見てた方がよほど有意義な時間の過ごし方です。

あなたが株価は読めないもの、将来のことは誰にも予測できないと理解しているならば、株価なんて気にせずに、自分の大切な人生を楽しく過ごせる投資法を考えましょう。

精神的なストレスが軽減された

近江商人の教えには、「運根鈍」という言葉があります。 成功するためには、幸運に巡り合うこと(運)、何事も根気よく続ける(根)、こざかしいことはしない(鈍)、この三つが必要であるというたとえです。

岩出 雅之著「逆境を楽しむ力

自分の感情をどのようにコントロールすべきか

株式投資の成功する秘訣は、天井で華麗に売り抜ける小手先のテクニックや未来の株価を予測する眼力(がんりき)を習得することでもありません。

それは長く続けることです。そして、長く続けるために必要なことは感情のコントロールです。

感情(emotion)と行動(motion)はラテン語のmovereという同じ単語に由来するように、感情によって人の行動は左右されると言います。

行き過ぎた悲観的な感情は、恐怖心をさらに助長して悪いほうに行動するようになると言われます。

例えば暴落相場が怖い、逃げたいと強く思い込い、SNSで相場参加者の相場観を調べたり、YouTube動画で暴落している理由を検索したり…

すると、一層あなたの不安感や恐怖感は増して、「これから株式相場はお先真っ暗だ」「これ以上は損したくない」「生きることが先決、今すぐ売ろう」といったネガティブな考え方を植え付けられ、根拠のない相場観や感情のままに狼狽売りしてしまうのです。

バフェットの「能力の輪」

ウォーレン・バフェットは「能力の輪」という概念を用いて人が習熟できる範囲を説明します。

つまり、能力の輪の内側あるものには習熟できるが、輪の外側にあるものは、理解できないか、ほんの一部しか理解できないとします。

その上で、「自分の能力の輪を知り、そのなかにとどまること。輪の大きさはそれほど大事ではない。大事なのは輪の境界がどこにあるかをきちんと把握することだ」と諭すのです。

高配当株投資ならどうでしょうか。

誰にも予測できない株価の値動きや業績動向は、輪の外にあるものと言えます。

比較的読みやすい配当金予測や経営陣の配当政策・株主還元の姿勢は能力の輪の中にあると言えます。

自分でコントロールできる能力の輪の中にあるタスクに集中する。

シンプルで分かりやすい高配当株投資だからこそこのようなエッセンシャル思考で専念できるメリットがあるのです。

モチベーションを上げる

もしも、あなたが真面目で失敗を嫌うコツコツ堅実タイプの性格なら高配当株投資はお勧めです。

なぜなら、受取配当金をどれだけ増やせるか?という計画や目標は、自分がどれだけ頑張ったかによって決まってくるからです。

一方で、年初来+〇%を目指す、と言った資産増減を目標設定する場合はどうでしょうか。

相場全体が年を通して軟調ならあなたがいくら頑張っても資産を増やすことできません。

高配当株投資なら受取配当金の推移を目に見える成果として捉えることができます。

配当金の受取額が年々増えれば増えるほど、自分が定めた目標があと何年ぐらいで達成できるのかも把握しやすくなり、投資に対するモチベーションも上昇します。

高配当株投資はストレスの軽減と同時に資産形成に向けたモチベーションアップも図れる投資手法と言えるのです。

高配当株投資に自信がつくようになった

チャーリー・マンガーの含蓄のある言葉を紹介しよう。「1世紀に2、3回の割合で起こると予想される50%の市場暴落に腹を据えて対応できなければ、一人前の投資家とはいえず、大したリターンも期待できないだろう」

ニック・マジューリ著 JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則

暴落相場に待ち焦がれる高配当株投資家

こちらのチャートを見てください。あなたはこのチャート見て買いを入れられるでしょうか。

株式投資では落ちてくるナイフは掴むなという格言があるとおり、世間一般では、相場全体が激安になっている状態での買いを推奨していないようです。

でも、上記のようなチャートで買いを入れらなければ、あなたは大きなチャンスをみすみす逃すことになります。

私も植田ショックやトランプ関税ショックでは、それぞれ10銘柄ほど新規購入。以後、購入した銘柄は順調に上昇してくれています。

しかし、実際は、買い増しを行うどころか、不安や恐怖のあまり保有株を狼狽売りしてしまうのです。

・自己資本比率が高く倒産する確率が低いといって購入した銘柄も、

営業利益率が高く、将来性があると言って購入した銘柄も、

・一生手放したくない優良な安定配当銘柄だと言って購入した銘柄も、

暴落相場を目の前にしたら、恐怖のあまり短期間で売ってしまうことになるのです。

そのあとは勝ち組投資家の出番です。

ハワードマークスは著書投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識の中で、「最良の投資方法とは、暴落時にどんな価格でも、とにかく売らなければならない人から買うことである」と言っています。

あなたも株式投資で成功したいのならば、暴落相場で売り手ではなく買い手に回る工夫が必要なのです。

配当利回り4.4%超の威力

高配当株投資の興味深いところは、配当利回り〇%以上という定義が人によって異なる点です。

投資家によっては、3.5%だったり、3.75%だったり、ひどいものになると2%以上とか(全然高配当じゃないし)、配当利回りを定義しない場合もあるようです。

仮に、配当利回りは〇%とします、と定義しても、そこには「なぜ、その配当利回りを高配当株投資と呼ぶのか?」という理由が明記されていない場合がほとんどです。

私の投資法は配当利回り4.4%超で購入するルールとしていますが、その理由は明確です。

これは私のマイルール(2009年以降減配なし、過去10年間営業赤字なし)で購入した高配当株は概ね配当利回り5.2%程度が底値圏だからと推測できるからです。

具体的に言います。

年間配当金44円の銘柄を配当利回り4.4%超で買うためには株価は1000円以下である必要があります。

このとき、配当利回りが5.2%が底値圏だとすると株は846円です。つまり、15%程度の含み損までなら精神的にもストレスなく許容しましょうと判断したのです。

私が暴落局面で落ちるナイフを掴みに行く買い方ができるのは、配当利回り4.4%超えの銘柄は、そろそろ底値が近いという確信があるからです。

もちろん、配当利回り底値圏15%という傾向は100%ではありません。それでも、保有株のうち、15%以上の含み損は116銘柄中1銘柄だけ、10%以上の含み損でも4銘柄だけです。

このように自分が確信できる絶対ルールがあると投資に強みが増します。私の高配当株投資では、配当利回りという単純な数値だけで底値を測れるというメリットがあります。

自分の投資法に自信が出てくると、あなたも暴落局面でも悠然と買い注文を入れられるようになるはずです。

100万円でたった配当金は4万円ぽっち?

配当利回り4%の株を100万円買ったとしましょう。これで受け取れる配当金はたった4万円です(税金を考慮すると3万2000円まで下がります)…

うーん、高配当株投資、しょぼい…

そう思うのも分かります。

そう、ホントは誰もが、2,3年で大金持ちになりたいです。いや、できることなら明日にでも大金を手に入れたいはず。

では、売買益を取りに行く投資法が効率的かと言えるとそうでもないようです。

例えば、アメリカではトレーダーの7割以上が1年後にはすべての資金を失って去っていくとされ、デイトレーダーのうち生き残るのは全体の5%という報告もあります。

また、数か月間で売買を繰り返すスイングトレードも同様。複数の研究で取引の頻度とリターンには負の相関があると言われます。

アメリカで6万5000人以上の投資家を分析した研究では、市場で特に活発に活動した投資家のリターンは特に何もしなかった投資家の半分だったという調査結果もあります。

買ったら安定配当が崩れるまで高配当銘柄を永久保有…それを忠実に実践した結果、我が高配当PFの上昇率上位はこのようになっています。

トップの三菱UFJの5倍株を筆頭に、ご覧のとおり、買値から2倍、3倍は当たり前の状態になっています。

これ以外にも最近TOBされた3.5倍株の日新、14倍株になったアルプス物流があります。

このように高配当株投資だって大きな利益を上げられるんだってことを知っていただきたいと思います。

もうひとつ長期投資に徹する理由は増配の可能性があるからです。

例えば、三井松島HDは1127円で購入。その後、増配を繰り返し、今では配当金230円予想です。つまり配当利回り20.41%で、これは特殊詐欺レベルの利回りです。

他にも買値を基準に配当利回り10%越えの銘柄をたくさん保有しています。これでも、高配当株投資は本当に効率が悪いと言えるでしょうか?

長期的な視点で投資できる

人間は1日でできることを過大評価し、1年でできることを過小評価する。最初は小さな、とるに足らない一歩でも、10年後にはあなたとライバルの間に巨大な距離ができているはずだ。

ドリー・クラーク著「ロングゲーム

短期的な不合理と長期的な合理性

山口周氏は著書「人生の経営戦略―自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」の中で「短期的な不合理は長期的に合理的である」という印象的な言葉を述べています。

これを株式投資に置き換えると…

・目の前の含み益を利確せずに長期保有して配当金を受け取り続ける行為

・資金をつぎ込めばつぎ込むほど資金が溶けていく暴落相場

しかし、このなんとなく感じる不合理な行動は、相場参加者と逆のことをする、あるいは人間の本能としてやりにくいことをやる株式投資の鉄則に酷似しています。

そして、暴落相場を経験するたびに、この違和感こそが資産形成で成功する感覚なんだと考えるようになりました。

株式投資は長期的な視点で投資することが成功の近道であると言われます。

一見、非効率でしょぼい配当金をもらい続ける高配当株投資でも、時間を味方にして長く続けることで大きな利益に成長します。

有名な例として、モーガン・ハウゼルの名著「サイコロジーオブマネー」によれば、ウォーレン・バフェットの純資産845億ドルのうち、815億ドルは60代半ば以降から増えたものだと言います。

バフェットは確かに一般人には真似できない投資の天才ですが、60歳そこそこで株式投資を辞めてしまったら、ただの投資家で終わっていたことになります。

そこには、4分の3世紀に渡ってやり続けたことが大きな資産を築き上げた要因であることを示しているのです。

投資では、「今すぐ」、「今年中に」、「来年中に」できることにどうしても目が行く。「どうすれば最大のリターンを得られるか?」と、反射的に考えてしまうのも無理はない。しかし、進化と同じで、その考え方では魔法は起こらない。

こつこつと積み重ねる複利の計算を理解できれば、最も重要な問いが「どうすれば最大のリターンを得られるか?」ではなく、「できるだけ長く続けるために、どのくらいのリターンを得るのがちょうどいいのか?」であることに気づくだろう。

モーガン・ハウゼル著 SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方


投機ではなく投資を行う

奥野一成氏の著書、「ビジネスエリートになるための教養としての投資」では、投機と投資の違いを以下のとおりすみ分けています。

投資:企業の「価値」に注目し、時間をかけてその価値を享受する行為。

投機:価格変動に賭けて短期的な利益を狙う行為。

株式投資は、投資した会社が経済活動によって経済価値を生み出し、その利益の一部を株価の上昇や配当金として還元するのが本来の姿と言えます。

よって、企業活動による経済的な対価を得るには時間が必要なのです。この考え方に従うなら、1円、2円の利ザヤを短期間で狙う行為は投資ではなく投機ということになります。

私もこの考えに感銘を受けて、株を売ると決めたら株価は気にしない、気にした瞬間、私は投機をしていることになるのだと自分に言い聞かせることにしました。

ただし、奥野氏は高配当株投資を馬鹿にするのでその点だけは許せませんが(笑)

高配当株投資は企業活動による経済的な対価として配当金を受け取ることが目的となります。つまり、否が応でも長期投資にならざるを得ず、私たちの短期的な志向に歯止めをかけてくれるのです。

兼業投資家はターボブーストを手に入れる

配当株投資のバイブル「株式投資の未来」を記したジェレミーシーゲルは、配当金を車の運転に例えて以下のとおり述べました。

下落相場で買い増した株式は相場がいったん回復すれば、下落に対するクッションどころではない役割を果たす。保有株が増すほど将来のリターンが加速するからだ。配当再投資は下落局面でプロテクターのとなり、株価がいったん上昇に転じれば「リターンの加速装置(アクセル)」となる。配当を支払う銘柄が、市場がサイクルを繰り返すうちに最高のリターンをもたらすのはこのためだ。

ジェレミーシーゲル著 「株式投資の未来」より引用。

そして忘れてはならないのは私たち兼業投資家には本業の収入があることです。

毎月の給料やボーナスの一部を投資資金に回す、節約して捻出したお金を投資資金に回す、そして、それをひたすら高配当株に突っ込む…

配当金を再投資に回すことが「アクセルを踏み込む」作業なら、兼業投資家はそれ以上の資金をつぎ込める「ターボブースト」を手にしたも同然です。

上図は、手元の資金300万円からスタートしたとして、単に配当金だけを再投資に回した場合と月5万円(年間60万円)を追加投資した場合の資産推移を比較したグラフです。

追加投資した場合、10年間ほどで配当金のみ再投資した場合に比べて約3倍程度も資産残高に差が生じることになるのです。

もしも、追加投資にも限界があるFIRE民だったらどうでしょうか。

暴落相場に遭遇してしまった場合は、株価が戻るのをしおらしく祈ることぐらいしかできないかもしれません。

高配当株投資は忙しい兼業投資家にとってアドバンテージがある投資手法だと言えます。

株式投資の先にあるもの

お金は人を幸せにしたことがないし、これからもそうすることはないだろう。お金には幸せを生み出す性質はないのだ。お金はあればあるほど、人はそれを欲するのである。

ベンジャミン・フランクリン(米国の政治家)

株式投資に必要な資質は忍耐力、株の儲けは我慢料なんて言葉を聞いたことがあります。

しかし、投資は人生を豊かにするツールにすぎません。なぜ幸せになるための投資なのに、日々ストレスを抱えなければならないのでしょうか。

お金を増やすために過度に精神的なストレスが増し、QOLが下がるようでは本末転倒です。そして、株式投資で人生の大半を消耗し、お金はあるけど人生の目的を失ってしまった、といった事態は避けたいところです。

高配当株投資は長期投資です。じっくり腰を据えて運用したい人向けの投資手法です。

高配当株投資はファンダ分析や株価の値動きなどのストレスからあなたを解放してくれます。

高配当株投資でやることは決められたルールに沿って淡々とこなすだけの投資手法です。

高配当株投資は、仕事や家族との時間などプライベートの充実と両立が図れます。

インデックス投資の一部を高配当株に振り向けたい人、個別銘柄投資に興味がある人、自分の投資法に悩んでいる人…

ぜひ高配当株投資にチャレンジしていただきたいです。

もし、わが高配当株投資の手法について詳しく知りたい場合は、こちらにリンクを張っておきます。ぜひのぞいてみてください。

私の高配当株投資スタイルまとめ このページは2012年から培った経験をもとに、高配当株投資のやり方をまとめたページです。 これからも株式投資を続けていく中で学ん...

なお、わが高配当株投資対象リストは日々更新しています。こちらからご覧ください。

期間限定公開!高配当株投資対象銘柄リスト 現在の高配当株投資対象銘柄一覧です(更新日は一覧表に記載)。 今後、私が新規投資または追加投資を行う場合は、これを買いたい!とい...

最後に

ということで今日は、高配当株本格運用10周年を振り返りながら、実際に感じた高配当株投資のメリットや感じたことを書いてみました。

これらのメリットを享受するために高配当株投資は何をすべきかというと…

・長期的な目標を作り、定期的に進捗をチェックする。

・本業でしっかり稼ぎ、追加資金をねん出する。

・売買ルールを守る

・マイペースで長期的な視点で投資をする

…こうしたタスクが求められることになりますが、本編、少々文字数が長くなったので、機会があれば次回以降の記事に回したいと思います。

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